
駒
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13年程属した会社を退職した日の朝のこと。
「こまー、お仕事終わったよ」と抱き抱えて撫でていると、こまの正面におばあちゃんが座っていた。「来てくれたんだね!ありがとう」。言いながら、わたしはおばあちゃんが大分若い事に気がついた。同時に、目の前にいるのは亡くなったおばあちゃんなのだと理解した。わたしはおばあちゃんを抱きしめて、「おばあちゃんありがとう、本当にごめんなさい」と大泣きした。
おばあちゃんはわたしがまだ20代はじめの頃に亡くなった。名前は駒。若くて何かにつけてイライラしていた時期。おばあちゃんに優しく出来なかった事が硬くしこりになっていた。だから猫を引き受けた時に、駒と名付けた。それから駒はわたしの大切な宝物となってこの世を去った。そのふたりが、わたしの夢の中で静かに対峙していた。
その朝、わたしは自分を許せたような癒しに満ちた夢をみた。