選択

選択

いつか自分の好きなものを集めて、お店を開きたいと思っていた。身体の弱い駒を保護団体から引き受けた時から、いつかは自分よりも先に旅立つのだと覚悟を繰り返していた。なるべく後悔がないようにしたかった。そしてあの日、「いつか」はやはりやってきて、そしてそれはとても現実的なものなのだと実感した。だからその時、「今だ」と決めた。

お店の文字は山崎屋源七提灯店8代目の山田記央さんにお願いして書いていただいたものだ。キャッチフレーズは、文字の打ち合わせ中に「なにか紹介文のようなものがあった方がいいな」と思い咄嗟に出てきたものだが、文字との相性も含め、とても気に入っている。

「良いものわたしの好きなもの」

少しずれた隙間からおおらかな風が抜けていくような、優しくておもしろいものが好きだ。そんなものが並ぶ場所を作りたい。そのほかに決まり事はない。人生はあっという間だ。だから、あんまり括ったらもったいない。そう思っている。

それが良ければそっちがいいし、そう思うのならきっとそっちだ。偶然も必然も、それが夢だったとしても、大した問題じゃない。わたしたちは眠りながら色彩豊かな夢を見るし、目が覚めている間にも、夢のような出来事を嫌というほど目の当たりにしてきた。道は幾通りもあるし、心を信じられれば道など構う必要もない。終着地に正解を求めるほど、わたしの心は外を向いていない。

あの時どうしていれば、今なんて言えば、どちらに進めばと考えを巡らせる時も、五感を伝っていつかの記憶をなぞる最中も、淡い期待に胸を膨らませている時も、その全てが自分自身だ。

駒はもういないけど、わたしの人生にはこの先も登場し続ける。ふとした時に、駒ならどう思うだろうと考えることがある。何これおもしろい!見てよ、駒。そんなふうに思い出す存在がわたしの中に在ることが嬉しい。そしてそれはすごいことだと思う。

確かなことがあるのなら、分かった人に教えてもらうとして、わたしはこのまま心を信じて歩いていこう。

Back to blog