その44 上っ面

その44 上っ面

環境への配慮を目的とした商品包装の簡素化の動きが広がっている。お店では、ギフト包装や紙袋の廃止・有料化が進み、シンプルな形で商品を持ち帰ることが増えた。地球環境保護という大義名分と、包装の簡素化による寂しさ。そのあいだで、思い出を掠めながら心が揺れることがある。
包装や紙袋は、単なる荷物の保護材ではない。丁寧な包装には、商品を選んだ時間や、お店の空気感まで持ち帰る、パッケージとしての意味がある。包装を解き、商品を取り出す時のワクワク感こそ、買い物の楽しみそのものだとすら思っている。幼少期から今に至るまでのあの時間の数々に囲まれて、一緒にワクワクしているような純粋なひとときに、大人になった今でも胸が高鳴る。

「上っ面」という言葉がある。表面的で、その場しのぎの体裁を指す、どちらかといえば否定的な意味で使われる言葉だ。けれど、この言葉をそのまま受け取ることに、すこし違和感を感じている。
上っ面、つまり上に現れているところは、初対面や通りすがり、深い関係に至らない距離感のなかで、相手と最初に触れ合う場所だ。だからこそ、その上っ面にどんな態度や配慮が表れるかは、その人の人間性をとても正直に映し出す。特定の相手にだけ向けられる誠実さではなく、軽い関係のなかでこそ滲み出る配慮や態度に、その人の本質が現れているように思う。
それは、包装とよく似ている。丁寧に包まれた商品は、その中身の質を想像させ、贈る側の姿勢を伝える。包装が主役になることはないが、そこに込められた配慮は、相手の心に温かく響く。
長い時間をかけて人々に愛され続けてきた老舗の包装紙が、今もなお多くの人の記憶に残るのは、その上っ面に、一貫した配慮や美意識が宿っているからだと思う。日常のなかにあるささやかな美しさを、雑に扱わない姿勢そのものが、商品とともに受け取られてきたのだろう。

世の中が目まぐるしく様変わりしていく最中で、基準が次々と塗り替えられていく。未来の環境や便利さと引き換えに失うものも少なくないが、上っ面に宿る配慮や温度、日常の美しさを掬い上げられる眼差しを失わずに生活していけたらいい。

Back to blog