その34 徒歩20分
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初めての場所や懐かしい街に行く時、最寄りではない駅から20分ほど歩いて向かうことがよくある。歩くことが目的というわけではない。ただ、乗り換えが面倒な駅はなるべく避けたいし、多少遠くても特急の停まる駅で降りて、そこから歩いた方がスムーズだと感じる時がある。そう思えるのは、時間と心に余裕がある時に限ったことだ。
そんな時、目的地は「ゴール」ではなく、地図上に刺さったピンのようなものになる。とりあえずあそこを目印にして、そのあたりを歩いていく感じだ。そう考えるとやっぱり、わたしはその街を歩くことを目的としているのかもしれない。
目的地までの探索は、20分くらいがちょうどいい。でも、その20分のあいだに、目的が増えていくこともある。
長い間、生活圏だった路線の沿線。その街を、あの頃の景色を探しながら歩くと、目的は時間と体力の限界まで広がっていく。心がほんわかして、浮き足だって、寄り道の候補ばかり増えていく。
目的は目標じゃない。理想じゃなくて、希望の方だ。だから軽やかに歩いていける。たどり着けなくても、それほどがっかりはしない。
小さな希望は、叶わなくてもいい。その街が心地よいのは、小さな希望がそこにあるからだ。