その65 音の消えた部屋

その65 音の消えた部屋

ここ数日、家のスピーカーの調子が悪い。たびたび、何の前ぶれもなく電源が落ちるようになった。何回か繰り返すうちに、驚きも薄れてきた。そろそろ買い替え時だろうか。
何時間も部屋に流れていた音が、突然ぷつりと切れて静かになった部屋の中で、ふと思ったことがある。
流れが途切れる瞬間。立ち竦む前の、取り乱す前の、あの短くも長い、無機質で静かな瞬間のこと。
調理中に手を切った時、手が滑って持っていたグラスが手から離れた時、洗濯物をガッツリ干してあるのに突然凄まじい音で雨が降ってきた時、忘れていた約束を思い出した時。嬉しいニュースが飛び込んできた時、悲しい知らせを受けた時。
それは、何かを感じる前の、意味などない縫い目のような時間であり、それでいて、心が時間の抜け道から先回りして変化を察し、息を止めて身構えているような、重い感触のある時間だ。

電源を入れ直して、再び音が途切れるまでの間。わたしは音楽に乗って、時間の抜け道について考えていた。

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