その59 夕暮れ
Share
雨の合間の夕暮れ時、海の匂いのする隅田川に沿って自転車を走らせている。久々の夕焼けを期待したが、晴れ間は夕暮れを待たずに雲に隠れてしまっていた。
川のほとりで、もうじき終わるような色をした空を鳥の群れが重たそうに飛んでいく。渋滞も、木も、草も、じめじめと湿気を纏った景色の中に閉じ込められたように動かない。
首都高のヘッドライトが、いつかの旅の帰り道をぼんやりと照らしだして、わたしは自転車を漕ぎながら、あの心地よい疲労の幸福感に包まれる。そうして心は、それが消える前に尻尾を掴むように忙しく旅の支度を始める。
期待が空想で膨らんで勾配を転げ落ちる前に、少しずつブレーキを強めて信号で止まった時、わたしの視線をゆっくりと向こう岸まで渡した鳥の群れは、もう見えなくなっていた。
夢のような出来事や、こうなるかもしれないという期待は、自分で見なくちゃいけない。だってこれはおとぎ話じゃないから。
川向こうの街まで夕飯の魚を買いに行く、わたしの人生の一コマ。