その33 枠の中

その33 枠の中

見晴らしの良い広大な場所にいると、気持ちがいい。目の前に広がる巨大な造形を前にすると、胸の奥が一気にひらけていくような、開放的な気分になる。そのときわたしは、景色そのものよりも、「爽快だ」という感覚のほうを強く味わっている。
一方で、窓やビルの谷間に切り取られた額縁のような景色では、流れていく変化のほうに焦点が集まる。光が傾き、雲が流れ、鳥がよぎる。匂いが鼻をかすめ、そこへ音が重なって、枠の中の景色はぐっと現実味を帯びてくる。その細やかな現実味が、じわじわと感情を揺さぶる。

壮大な景色を前にすると、その「爽快感」にピントが合う。
切り取られた景色を眺めていると、その中の小さな変化にピントが合う。

世界は広い。過去にも未来にも広がっている。だから、わたし達はその世界を、切り取るようにして見ていくしかない。窓の向こう、ビルの谷間、店の入口、皿の中。それから、情報端末の画面もそうだ。いくつもの「枠」を通して世界を生きている。その枠の中を、景色や出来事が流れていく。目の前で起きた出来事は、時間の中で枠の向こう側へと過ぎ去りながら、五感を通して記憶になる。
切り取った景色を切り貼りするようにして、わたしは世界をつくり、わたしをつくっている。

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