在ったもの、起きたこと。あの街で暮らした日々のように、物事は確かさを連れて通り過ぎていく。 記憶の中にはそこそこ確かに残っているのに、それを証明できるのは誰かが残した記録のみだ。やがて消える泡、殻のなかの卵、どこかにあるはずの探し物。 わたしは多分そんな、確かさの余韻を生きている。猫が、胸に乗り上げて腰をおろす。ジャラシに飛びついて着地する。猫砂に足跡をつける。 立ち上がって伸びをして、すこし移動してまた眠りにつく。 猫の柔らかい重み。残されたあたたかい痕跡。