
約束
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夫と結婚して、7年半ほどが経った。
1年間同居してみて、無理がなければ結婚しようというような約束をした。他人にあまり期待をしない、おおらかな相手のおかげで、わたしたちは1年後、晴れて夫婦となった。
何気ない一言やほんの些細な出来事が、時間を経て自分の人生においてとても大きな意味を持つことがある。けれどそれは、時間と心が作り出した“物語”であって、実は自分でどこまでも再構築しているような気がする。そうした出来事自体は、物語を彩る飾りのようなものでしかなく、本当は意味など持っていないのかもしれない。
わたしは約束なんていうものは、吹けば飛ぶような走り書きのメモ程度に思っている。正しくは、そう思うことにしている。たまたま記したその時の感情に執着したところで、今この一瞬にとどまることはできない。ましてや相手があることだ。頑張ったところでどうにかなるものでもない。歩みを進めたその先で、誰かの愛情が降り注ぐ瞬間もあれば、どうにもならない理不尽に立ち尽くすこともある。
だからこそ、「約束」に意味を求めすぎない。大切なのは、自分が今、相手とどう向き合うかだ。相手の時間を大切にできれば約束など不要だし、相手の時間を大切にできないのなら、約束など尚更に不要だ。人生は短い。そんなことに心を持って行かれている場合ではない。
どうせ全部思い出になるのなら、誰のせいでもなく、自分の選んだ時間を楽しみたい。