その24 夏のせいにして
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とんでもない夏が去った。
あの暑さでは、考えることさえ億劫だった。
9月も終わりに差しかかり、ようやく暮らしの中の小さな選択にも、楽しみが戻ってきた。
心が生き生きと動き出し、無駄を楽しむ余裕が出てきたことが嬉しい。
何にしよう、何をしようか。ついでにこれもしよう。
生活の幅が広がっていくこの感じは、久しぶりだ。
野菜が新鮮な店、肉が安い店、魚の種類が豊富な店。
珍しい調味料が手に入る店。
せっかくあっちに出向くなら、あそこにも寄りたい。
どうせなら隣の街まで足を伸ばしてみよう。
ひとつ決めた先で、景色が広がっていく。
わたしは、わたし自身の小さな選択の繰り返しでできている。
記憶にも残らない些細な選択の途中で新しい物事と出会い、
その先で、今日の夕飯が決まったり、大切な決断を下したりする。
人生は思い通りにならない。考えなければ、なおさらだ。
この夏をざっくり振り返ると、もったいない時間の過ごし方をしたなという後悔が先に立つ。
狂おしい暑さのせいにしたところで、気候が詫びて時間を返してくれるわけではない。
そして来年も、また夏は来る。
今のうちに、夏の攻略法を練っておく必要がありそうだ。