その28 伸び

その28 伸び

伸びをすると気持ちがいい。縮こまった部分をぐんと反らすと、筋肉がほぐれ、血流がよくなり、ガチガチの頭と体に酸素が行き渡る。すると固まっていた体が伸び、同時に心が解放されるような晴れやかさが、じわっと広がっていく。

ラジオを聴いている時も、近い感覚を覚える。作業中、気になるトピックが流れてくると、それが凝り固まった頭に染みていく。集中力が高まったところで意識がラジオに全シフトするのだから、想像力も最大限に働き、楽しい世界が緊張や孤独を一瞬にして解きほぐす。だから「ながら作業」で聴くラジオのリラックス効果は大きい。好きな番組やコーナー、パーソナリティへの愛着、そこに生まれる連帯感が特別に感じられるのも、そのせいだと思う。

デスクワークの途中、区切りの良いところでぐーっと伸びをする。会社に勤めていた頃は、一度お手洗いに立って個室で、顔ごと大きく伸びていた。いわゆる「変顔」つきで二割ほど大げさに伸びると、これが驚くほど気持ちよく、仕事中の良い気分転換になった。人には“対外用”に酷使している筋肉があるのだろう。職場で疲れたら、ぜひ試してみてほしい。

猫もよく伸びをする。びよーんと長く伸びたり、丸くなって上に引っ張られるように伸びたり、伸びながら歩いたり。その時々でいろんな伸び方をする。「なぜそうなった」という寝方のあと、逆方向に反るような伸びで仕切り直すのを見るたび、つくづく面白い生き物だと思う。考えてみれば、猫にとっては寝ること自体が伸びの延長なのかもしれない。快適な寝床で少しずつ寝相を変えて眠り、ごはんの時間に起きてくる。時々「かまえ」と催促して、そしてまた眠る。猫は、伸びをするように生きているなと思う。

伸びや欠伸をするとリラックスする。こんなにも心地よい行為が体に悪いはずがないのだから、心置きなくしたいものだが、伸びも欠伸も、じつのところ「安心」がないと全開ではできない。猫を見ていると、リラックスするためにまずリラックスできる環境をつくることが、結局のところリラックスの秘訣なのだと感じる。

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