その41 花
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リビングに、こまの写真を飾っている。祭壇というほど仰々しいものではなくて、暮らしの中に置いた一角だ。そこに花を生けるのが、いつのまにか習慣になった。お花屋さんを知り、花を知り、好みの花にも出合った。この一年で、わたしの暮らしに「花を選ぶ」という楽しみが増えた。
花は、いつもの風景に明かりを灯すように、さりげなく在る。そっと日常を照らし出すその控えめな存在感が、花をよりいっそう美しく感じさせる。でも、花に惹きつけられる理由は、それだけではなさそうだ。
花には、とても不思議な気配がある。そこだけ少し止まっているような、そこだけまだ、世界の向こう側にあるような特別な気配だ。安心と危うさが同居していて、それはまるで、生まれて間もない命のようだ。あの質感は、生まれたての赤い動物、あるいは羽化したばかりの白い昆虫に近い。
膜を破ったことにも気づかないまま、羊水の中で眠るみたいに咲いて、抗うことも知らないまま、フッとスナッファーを被せられたように、突然彩りを失っていく。
主張なき美しさ、自覚のない開花。そのまま朽ちていく姿に、もののあはれがある。
花の横で揺れるわたしの感情が、こまの写真の横で、わたしを惹きつけている。