茶色い弁当

茶色い弁当

夕飯のサラダ用に買ったミニトマトが余った時など、弁当に添える。せっかくなので、ヘタがついたまま添える。それだけで急に鮮やかになる。そうなるとブロッコリーなども加えたくなる。
出来上がった弁当をランチクロスで包みながら、「今日の弁当は見栄えも身体にも良いぞ」と思うと気分もいい。

玉子焼き、ウインナー、揚げもの、焼きもの、さくらごはん(静岡の茶色いごはん)、のり弁、オムライス…。
学生時代、母の弁当が毎日茶色すぎて、「恥ずかしいからもっと彩りを考えてよ」と文句をつけたことがあった。翌日の弁当は、色とりどりのおかずに可愛らしいピックがささっていた。私はこれに満足した。これこそが女子校に持っていく弁当の正解だと思った。

だけど、本当はブロッコリーのスペースは唐揚げがいいし、トマトは特段好きではない。小さい箱は、彩りじゃなくて好きなものでいっぱいがいい。
母はきっとそれを知っていた。共働きで忙しい中、毎朝、私が食べたいお弁当を作ってくれていた。

親元を離れ、自分で生活をするようになると、母が当たり前のようにしてくれていたことが、つくづく簡単なことではなかったのだと気づく瞬間が幾度となくある。
あの頃の母くらいの年齢になり、とてもじゃないが私はあんなふうに出来ないなと思う。
帰省した団欒の席で、半分笑い話としていくつか謝って御礼を伝えたりもしたが、弁当の件も含め、母はなんでもないことのように笑うばかりだ。

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