その43 しっぽ
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1月7日、我が家に新入りが来た。生後7ヶ月にしてはすこし小柄な雌の子猫だ。わたしたちはその子猫を「ふう」と名づけた。
ふうは夕方、我が家にやってきた。ケージを開けるとすぐに部屋の角の狭い隙間に入り込み、不安げな表情でこちらを伺っていた。その日はそこから出てこなかったが、水を飲み、ごはんを食べ、おしっこをして、うんちをして、おもちゃで遊び、甘えるようになっていった。当たり前のことができるようになるまでに、たくさん考えて頑張ったのだなと思うとなんともいじらしくて愛おしい。
先住猫たちの心になるべく負担がかからぬよう、わたしたちは透明の板で部屋を仕切り、ふうを隔離して様子を見た。一週間ほど経ったある日、ふくとぬいが子猫を家族として受け入れたように見えた瞬間があり、その日から3匹の生活が始まった。
昼間はほぼ寝ているふくとぬいのそばで、小さなふうがゴム毬のように走り回っている。身体の割に大きなしっぽをピーンと立てて、バランスを保つというより、まるでしっぽに面倒を見てもらっているように見える。そしてそのしっぽで、一丁前に、はっきりと感情を表現するのだから面白い。
ふくもそうだった。生後3ヶ月でやってきたふくは、瞳孔がまだ曖昧でどこか宇宙人のような顔をしていたから、表情からはイマイチ気持ちが伝わってこなかったけど、たくましいしっぽからは幼いふくの忙しい感情の変化がわかりやすく伝わってきて、それがとても面白くて愛くるしかったことを久しぶりに思い出した。
猫はとても感情豊かな生き物だ。そしてそれを、表情やしっぽのほかに、仕草や鳴き声、耳の動き、喉の筋肉などあらゆる方法で表現する。そしてその一つ一つがなんとも豊かで、ずっと見ていたくなる。
例えばしっぽはこうだ。不快なときはペシペシ叩きつける、怖いときは引っ込める、面倒なときはしっぽだけで対応する、驚いた時は狸尻尾、ご機嫌な時はキャンディケインになる。
そしてふくのしっぽは、先端がホイップクリームのツノのようにふんわりちょんっとしている。仔猫の頃から変わらず、ふくのトレードマークの一つだ。
最近は3匹で並んでごはんを食べる。ふくとぬいと、ひとまわり小さいふうが一列で座り、黙々とご飯を食べている。ふくは筋肉質で毛並みが馬のようにツルツルしている。ぬいはふわふわ丸くて一番大きく見える(実際はふくが4.2kgでぬいは3.5kg!)。ふうは床に食べカスを撒き散らしながら、「おいしい」を負かしそうな必死さで食べている。身体は小さいがふうのしっぽが一番太い。不思議なバランスの3匹の後ろ姿を眺めながら、すこしずつ小さくなっていったこまの姿を思い出していた。そして、あれだけたくましいと感じていたふくのしっぽが妙にか細く見えたことが気になった。それでも先端は相変わらずふんわりちょんっとしていて、まだまだわんぱくなふくが、シニアに差しかかりつつある事実がふと胸をついた。できるだけ後悔のないように、なるべく伝え忘れのないように、猫たちとの時間を過ごしていきたいと、改めて思った。