その40 風

その40 風

年が明けて、寒さも一段増し、冬という季節がいよいよ鮮明になった。毎年冬が来ると春を待ち侘びたものだが、散々な猛暑のせいで、今はこの寒さを喜びに近い感情で噛み締めて過ごしている。
年末年始のどこか浮き足立つ雰囲気が過ぎ去り、静けさのあとで、いつもの風景がフェードインする。
カサカサと音を立てて転がってくる大ぶりの枯葉。水面が穏やかに波打ち、その揺らぎを揺蕩う光の連なり。翼を広げたユリカモメの群れが、等間隔で欄干に降り立っていく。空っ風に攫われたビニール袋が宙を舞い、真っ青に澄んだ冬空を、クラゲのように泳いでいる。

こまがこの世を去ってから、風が運んでくるあらゆる風景にこまの気配を感じるようになった。こまがいるような気がして、日常に溶け込む小さな出来事に目を凝らした。でももしかしたらわたしは、風そのものにこまの気配を感じていたのかもしれない。

この一年、始まったことと終わったことはどれくらいあっただろうか。同じだけの始まりと終わりを繰り返しながら、日々は続いていく。新しい時間を風が均して、日常は少しずつその姿を変える。気づけばこの一年で、わたしの生活はだいぶ様変わりした。

16日、こまの命日に子猫と出逢った。わたしたちは、こまが運んできてくれた宝物だと思い、家族に迎え入れることにした。いくつか考えた候補の中から、子猫は「ふう」という名前になった。漢字で風と書く。

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