その70 寝床

その70 寝床

よく晴れた日、うす暗い日、とても寒い日、誰もいない日、そうじゃない日。
猫はいろんな寝床を持っている。そしてお気に入りの場所をコロコロ変える。毎日いた場所に急に寄り付かなくなったかと思うと、買ってから半年間まるで見向きもしなかったベッドで腹を出して爆睡していたりするし、どこにもいないと思ったらとんでもない所で寝ていたりする。
こまとふたりで暮らしていた頃も、幾度となく狭い部屋を半べそで探しまわった。
そしてそのたびに、ベッド下の収納、便器裏の隙間、洗濯かごの中。想像もしなかった場所でスヤスヤと寝息をたてるこまを見つけては、座り込んで安堵したものだ。
限られた場所で、よくもまあそんなにたくさんの寝床を見つけ出すものだと、猫には毎度感心させられる。
洗い立てのシーツ、窓枠の陽だまり、飼い主の膝の上、湯たんぽの傍。
小さな世界の繊細なグラデーションに、猫はきっと気づいている。

今この瞬間がどれほど美しくても、幸福に満ちていても、わたしはどうにも何かをジャッジしてしまいがちだ。膝の上で、猫がわたしを見上げて、また眠りにつく。

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