その67 45歳

その67 45歳

駐車場の大木が、青々と茂る葉をおおらかに揺らしている。たしかこの木を最後に見たときは、暮れかけの逆光に照らされ拡がる毛細血管のようなシルエットだった。葉を透かす木漏れ日の煌めきを横目に、バッグを肩に掛け、イヤホンをつけながら、駅へと歩き出す。
秋はもう来ているというのに、湿度を含んだ重たい夏が、駄々をこねる子供のように、まだここにいるんだと地べたに座ってなかなか離れようとしない。
予想気温を頼りに、久しぶりに元の通勤ルートに戻して駅まで自転車で来てみたものの、駅のホームに着いた頃にはしっかり汗が吹き出してきた。
わたしの隣では、ジャケットを羽織った若い女性が涼しげな眼差しをスマートフォンに落としている。その時ふと、更年期に肩をトントン叩かれた気がして、なんだか可笑しくなった。つい最近まで20代で、一昨日くらいまで30代だったはずなのに、気づけば45歳になっていた。こんなふうに、すぐ冬が過ぎてまた夏が来て、あっという間に50代、60代と、歳を重ねていくのだろう。

これからも、たくさんの選択をしていく。やり残してきたことは、まだたくさんある。その中で、これから何を選んでいくのだろう。想像もつかないこの先が、楽しみでもある。
先週から、突然思い立って教習所に通いはじめた。やり残したと思っていたことのひとつだ。

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