その66 無人島

その66 無人島

人づきあいが得意ではない。
人が嫌いというわけではない。過ぎたことがささくれた心に引っかかって、なかなかほどけないのだ。余計なことを言ってしまった。なぜあんなことをするのか。あの表情はどういう意味だ。考えても仕方のない錘を括りつけられたように、何日もぐるぐると抜け出すことを忘れてしまう。だからできるだけ内に籠もって生きていたい。一人の時間が好きだし、家で過ごす時間に何よりも安らぎを感じる。自分を保てる場所、自分を守れる場所。そこで、家族とともに生きている。
家族が大切な存在で、失うことなど考えられないのは、自分の人生の一部だからではない。
わたしにとってそれは、無人島に誰かがたどり着き、そこを心地よいと感じて腰を下ろし、根を張り、暮らしを営んでいるような、そんなイメージだ。風が草木を揺らし、鳥が鳴き、波が打ち寄せる。それだけで満ち足りているところに、足音が聞こえ、お腹が空くような湯気が立ちこめいく。
家族とは、全くの別物同士が互いを必要とし、そこに安らぎを覚えていくものだ。決して分かり合えないけれど、相手を通した自分が良いものであるならそれでいい。それがいい。

台風が来ている。
猫がソファの背もたれに乗っかって、仰向けで白目を剥いて寝息を立てている。

ブログに戻る